現在の賃借人との契約を保持したまま、マンションの一室や一棟まるごと、または一軒家・店舗などの不動産物件を売買する手法を指します。
この売買でオーナーになる買主は、賃貸借契約や毎月の賃料だけでなく、賃借人に対する敷金の返却義務などの権利を一式、引き継ぐことになります。売主と買主の間で権利の移転は生じますが、マンションの入居者など賃借人に影響を与えることはありません。
なおオーナーチェンジを行うには、賃借人が1世帯以上いることがポイントになります。全室空室の場合は、オーナーチェンジとはみなされません。
一棟マンションをはじめとした投資用物件でオーナーチェンジを行う場合、買主側は物件の購入後すぐに賃料を回収できるため、利回りを想定しやすいほか、ハウスクリーニングやリフォームなどの初期費用が不要な点、空室の物件より比較的安く購入できるなど、メリットが多くなります。対して売主側は、買主側にそうした多くのメリットがあるおかげで、売却しやすいという点が大きなメリットと言えるでしょう。
オーナーチェンジでの一棟マンションの売却手順は、通常の物件売却とほとんど同じです。
まずは、複数の不動産仲介会社に物件査定を依頼。その中から自分の条件に合う会社を選定し、媒介契約を結びます。その後、物件が売りに出されたら売却活動を始めます。専門知識が必要な活動については、不動産仲介会社がサポートしてくれるのが一般的です。
物件の購入希望者が現れたら、価格や引き渡し時期などを交渉。双方が全ての条件に合意したら、売買契約を結びます。決済と登記手続きを済ませて、賃貸借契約の引き継ぎを行います。
引き渡しが完了したら、マンションの入居者に、書類でオーナーチェンジがあった旨を知らせます。書類には、管理会社や家賃の振込先の変更などを記載します。
一般的な不動産売却と同様に、オーナーチェンジで売却益があったときは、確定申告を行い、所定の方法で納税しましょう。
オーナーチェンジは買主側に多くのメリットがあるものです。スムーズに売却を進めるには、物件を売りに出す際、いかに買主側のメリットを保持するかがポイントです。
例えば、更新期限が近いマンションの入居者に、契約更新をしてもらえるよう、更新料を無料にするといった方法が考えられます。
売却する一棟マンションに空室が多い場合には、家賃や敷金・礼金などの初期費用の見直しを行うことで、需要が増える場合もあります。相場より安い家賃で提供すれば、高い入居率が期待できます。
その反面、買主側は家賃などが低くなるほど収益が減るため、あまり賃料などを低く設定してしまうと、買主側のメリットが減る要因となります。
家賃設定については、相場とかけ離れた金額とならないよう、相場と経営状況を踏まえながら見直すことが大切です。
一般的な不動産売買に比べてオーナーチェンジによる一棟マンション売却は、購入希望者が少ない傾向にあるため、売却難易度が高くなりやすいもの。そのためオーナーチェンジを成功させるには、査定価格だけでなく、オーナーチェンジでの売却実績や宣伝力のある不動産仲介会社を選ぶことが重要です。